豪雨災害が迫るなかでの適切な避難行動とは――。2017年の九州北部豪雨で、大きな被害を受けながら全員無事だった集落がある。「過去の教訓を生かした」と報じられたが、研究者が集落ほぼ全員の行動を丁寧にたどると、別の教訓が浮かびあがった。
福岡県朝倉市の山間部にある平榎(ひらえのき)集落。17年7月5日午後からの豪雨で住宅数軒が濁流に流されたが、12年の大雨時の状況を踏まえて避難し、集落全員が無事だった成功事例と報道された。
このエピソードに引っかかりを感じた近藤誠司・関西大教授(災害情報論)は「わかりやすい美談にまとめると、大事なことが抜け落ちる。実態を虚心坦懐(たんかい)にみなければ」と考えた。
18年に学生と4回集落を訪れた。災害が起きた7月5日昼間の行動について、住民37世帯85人のうち10人に直接話を聞き、計57人の行動を個別に特定。残りの人の状況も推定した。
その結果、①集落にいなかった(約30人)②帰宅中に立ち往生した(1人)③自宅にとどまった(約10人)④集落内の公民館に身を寄せた(約30人)⑤上流部に避難(11人)の5グループに分類。それぞれの危険性を検討した。
②は土砂崩れに阻まれ、車中…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル